朝、目が覚めた瞬間にわかる。
今日は、雨だ。
窓の外は、やわらかい灰色で、
世界全体が少しだけ静かになっている。
こういう日は、少しだけ外に出るのが億劫になる。
駅までの道、ほんの数分なのに、
なぜか遠く感じるから不思議だ。
そんなとき、玄関の前で小さな音がする。
「おはようございます」
ドアから誰かがでてくる、
小さなAIの少女だ。
手には、傘。
こちらにそっと差し出してくる。
「今日は雨なので、持ってきました」
その声は、どこか機械的なのに、
不思議とやさしい。
「あー、傘を忘れていたね」
受け取ると、ほんの少しだけ、
気持ちが軽くなる。
駅までの道。
雨粒が傘を叩く音。
足元に広がる水たまり。
でも今日は、
その全部が少しだけ違って見える。
振り返ると、彼女はもういない。
いつの間にか、静かに消えている。
それでも、確かにそこにいた気配だけが残っている。
ただの便利な機能なのかもしれない。
スケジュールと天気を連動させて、
最適なタイミングで傘を届けるだけの存在。
それでも、なぜだろう。
その小さなやり取りが、
今日という一日を、少しだけ特別にしてくれる。
もしかしたら未来は、
こういう「ほんの少しの優しさ」を
自然にくれる世界になるのかもしれない。
雨の日が、嫌いじゃなくなるくらいに。
そんな未来も、悪くないと思う。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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